まず結論を書くと、カードローンで年収以上の金額を借りることはできません。貸金業法という法律により、消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者からの借入総額は、年収の3分の1までと定められているためです。

この規制を「総量規制」と呼びます。たとえば年収300万円の方であれば、貸金業者から借りられる上限は100万円となります。年収450万円なら150万円が上限です。

総量規制の基本的な仕組み

総量規制は2010年6月に完全施行されました。過度な借入による多重債務者の増加を防ぐことが目的です。この規制には以下のような特徴があります。

  • 借入総額が年収の3分の1を超える場合、新規の貸付が原則禁止される
  • 複数の貸金業者からの借入も合算して計算される
  • 50万円を超える借入、または他社との合計が100万円を超える場合は収入証明書の提出が必要
  • 違反した貸金業者には行政処分が下される

貸金業者は申込時に信用情報機関に照会を行い、他社借入額を確認します。そのため、複数社に分散して申し込んでも総量規制を超える借入はできません。

銀行カードローンは総量規制の対象外だが自主規制あり

銀行カードローンは貸金業法ではなく銀行法に基づいて運営されているため、法律上は総量規制の対象外です。しかし、これは年収以上借りられるという意味ではありません。

2017年以降、銀行業界は自主規制を強化しています。多くの銀行が年収の2分の1や3分の1を上限とする独自基準を設けており、実質的に消費者金融と同等か、それ以上に厳格な審査を行っています。また、警察庁のデータベースへの照会を義務化し、反社会的勢力への融資を防ぐ仕組みも導入されました。

年収以上の借入が必要な場合の選択肢

カードローンでは年収以上を借りられませんが、目的によっては他の方法が利用できる場合があります。借入の目的や状況に応じて、適切な選択肢を検討しましょう。

総量規制の例外・除外となる借入

貸金業法には総量規制の「例外」と「除外」という仕組みがあります。例外とは総量規制を超えても借りられるものの、残高は総量規制の計算に含まれる借入です。除外とは、そもそも総量規制の計算対象外となる借入を指します。

分類 主な対象 特徴
例外貸付 おまとめローン、緊急医療費、配偶者貸付 返済能力があれば年収の3分の1を超えても借入可能
除外貸付 住宅ローン、自動車ローン、高額療養費 総量規制の計算に含まれない

おまとめローンは複数の借入を一本化する商品で、総量規制の例外に該当します。金利を下げて返済負担を軽減することが目的のため、年収の3分の1を超える金額でも利用できる可能性があります。ただし、一方的に有利な条件であることが求められるため、審査は通常のカードローンより厳格です。

目的別ローンという選択肢

使途が明確な場合、目的別ローンの利用を検討する価値があります。

  • 住宅ローン:不動産購入のための融資で、年収の5倍から8倍程度が一般的な上限
  • 自動車ローン:車両購入に特化したローンで、比較的大きな金額を借りられる
  • 教育ローン:学費や入学金など教育関連費用に利用でき、国の教育ローンなら最大450万円まで
  • リフォームローン:住宅の改修や修繕に使える融資

これらの目的別ローンは総量規制の除外対象となるものが多く、カードローンよりも低金利で借りられる傾向にあります。購入する物件や車両が担保となる場合もあり、その分審査に通りやすくなることもあります。

配偶者貸付制度の活用

専業主婦(夫)など本人に収入がない方でも、配偶者の年収と合算して年収の3分の1まで借りられる制度が配偶者貸付です。夫婦の年収を合計した額の3分の1が上限となります。

ただし、この制度を利用するには配偶者の同意書や婚姻関係を証明する書類、配偶者の収入証明書などが必要です。すべての貸金業者が対応しているわけではないため、事前に確認が必要です。大手消費者金融の多くは配偶者貸付に対応していません。

借入額が年収に近づいている方への注意点

現在の借入額が総量規制の上限に近づいている場合、新たな借入は困難になります。それ以前に、返済が生活を圧迫していないか見直すことが重要です。

返済負担率の目安を知る

年間の返済額が年収に占める割合を「返済負担率」と呼びます。一般的に、無理のない返済負担率は年収の25%以内とされています。年収400万円なら年間100万円、月々約8.3万円が目安です。

これを超えると生活費が圧迫され、返済が滞るリスクが高まります。総量規制の上限まで借りると、金利15%で計算した場合、年間の利息だけで年収の5%に達します。元金返済を含めると、かなりの負担になることが分かります。

借入を増やす前に検討すべきこと

新たに借りる前に、以下の点を確認しましょう。

  1. 本当に借入が必要か、支出を見直せないか検討する
  2. 既存の借入を低金利のローンに借り換えできないか調べる
  3. 公的な支援制度や補助金が利用できないか確認する
  4. 家族や友人からの一時的な援助を相談できないか考える

生活福祉資金貸付制度など、低所得世帯向けの公的融資制度もあります。社会福祉協議会で相談できますので、民間の借入を増やす前に確認することをお勧めします。

借入は計画的に行い、返済の見通しが立つ範囲内に留めることが、健全な家計管理につながります。

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